大腸小腸絶不調

生活は下手クソですが、得意気に生きるのは得意です。

魔術はささやく(宮部みゆき)を読みました

ご無沙汰しております。

半年ぶりですね。久々すぎて緊張で口から飛び出た胃を使ってタイピングしています。

 

書評なんて出来るような頭も経歴も持ち合わせておりませんが、久々に読書をしたらまぁ、まぁ~~~~~~~クソ面白かったので共有したくなりました。

内容の本筋についてはあまり書かずに、読んでて泣くくらい響いたセリフとか抜粋して、それっぽい雰囲気を出していこうかなと考えています。

そう。この本の面白さもそうだけど、読書自体の楽しさをまず知ってほしいんですよ。だから朝5時にキーボード叩いてる。眠くない。さっき1冊の残り1/3くらいを一気に読み終えて眼も頭も爛々としている。

 

お願い。みんな、本を読んでくれ。

 

 

~~~

 

まずは簡単に作品自体のお話だけしときます。

さっくり説明すると、主人公の甥が、タクシー運転手の仕事を終えた帰り道で人身事故を起こしてしまい、被害者の女性が死んじゃいます。

叔父の無実を証明するためになんやかんやしていた主人公が、全く関係ないはずの2件の「自殺」に辿り着きます。

もしかして叔父の交通事故は──みたいな話です。多くは語りません。今回話したいのはそこじゃない。もし気になるなら読んで。

 

つい先ほど読み終えて「やっぱバチクソおもしれえわこれ」と思って、そのまま解説を読んだらそりすぎてそりになってしまったので、ちょっと解説を引用させてください。北上二郎さんの解説です。

 

退屈な小説は、主人公から脇役まで登場した途端に、それがどういう人物であるのか、生い立ちから性格までたちまち見えてしまって発見がないものだが、<説明>と<描写>の違いをわかっている宮部みゆきの小説には、そういうことは滅多に、いやほとんど起こらない。

 

描写。宮部みゆきは人間を書くのが本当に上手い。一体どんな人生経験を積んだらこんなに魅力的な、良い意味で人間臭い人物が書けるのか聞いてみたい。もし自分が小説を書くとしても根暗なオタクか頑固なドカタか、あとは姑息で打算的な大人とか脳みその足りない女性とかしか出てこない話になりそうで怖い。考えてて悲しくなってきた。

そしてさっきの引用にもあったとおり、それを説明だけにしないで、ちゃんと物語の流れに乗せて少しずつ際立たせていくんだからすごい。まるで飽きない。登場人物がキャラクターにならずに、作中で人間がちゃんと生きているのを感じられる。だから物語の中で成長するし、苦悩するし、その中で選択をしていって、一喜一憂する。立ち止まったり前に進んだりする。家族の機嫌の良し悪しが階段を上る足音でわかる、みたいな感覚に近いものが文章から頭に流れ込んでくる。引き込まれるって多分こういうことなんだろうな。

 

故に、自分はこの本の中で「好きな台詞」ってのがちょくちょくある。台詞以外も挙げだしたらキリがないので、とりあえず勢いのままにいくつかの台詞を紹介させてください。

 

「じいちゃんが思うに、人間てやつには二種類あってな。一つは、できることでも、そうしたくないと思ったらしない人間。もう一つは、できないことでも、したいと思ったらなんとしてでもやりとげてしまう人間。どっちがよくて、どっちが悪いとは決められない。悪いのは、自分の意思でやったりやらなかったりしたことに、言い訳を見つけることだ」

かっけえ。もうほんとかっけえと思っちゃった。

多分この「二種類」で世間で良い人とされるのは圧倒的に後者なんですよ。みんながんばったで賞大好きだから。でも前者も含めて「どっちが悪いとは決められない」と置いた上で「自分で決めたことに言い訳を見つけるな」って言うのかっこよくないか?ちょっと前向いて歩けるようになりません?

関係ないですが、この「じいちゃん」は祖父ではありません。詳しくは新潮文庫から出版されている魔術はささやくをお読みください。次。

 

「蛙の子がみんな蛙になってたら、周りじゅう蛙だらけでうるさくてかなわん。俺はただの体育の教師だから、難しいことはよくわからん。わからんが、教育なんてしち面倒くさいことを飽きもせずにやってるのは、蛙の子が犬になったり馬になったりするのを見るのが面白いからだ」

「ただ世間には、目の悪いやつらがごまんといるからな。象のしっぽに触って蛇だと騒いだり、牛の角をつかんでサイだと信じていたりする。連中ときたら、自分の鼻先さえ見えとらんのだ。ぶつかるたびに腹を立てんで、お前の方からうまくよけて歩けよ」

 人間臭えええええええええ!!!!!!!!!!最高!!!!!!!!!!

主人公の学校の体育教師です。めちゃめちゃ頑固なおっさん。ちょい役でしか出てこないのにこの台詞の重さったらもう。

お勉強で培ったものではないから理屈では説明できないんだけど、自分の経験上これは間違いない、参考にしてくれなって感じがさ、もうすげえいいの。自分から「難しいことはよくわからん」って保険かけてるのが、逆にこのメッセージの核を支えることになってるのもまたいい。すごくいい。

このシーンでしか喋りませんが、この前後の話もまぁ好きです。主人公の担任との対比もいい。詳しくは新潮文庫から出版されている魔術はささやくをお読みください。次。

 

 

で、めちゃくちゃ書きたい台詞があと2万行くらいあったんだけど、さすがに話の本筋に絡むものが多いので自重させてください。是非手に取って、その目で読んで体験してほしい。今読み返してラストの真紀とより子の会話読んだらぼろぼろ涙出てきた。ほんとにこの作品は人物がいい。真紀とより子は主人公の義姉と叔母です。どちらも本当に素敵なキャラしてるし俺はもう「こんな姉がほしい」つってまた泣いてるんですけど、気になる方は新潮文庫から出版されている魔術はささやくをお読みください。

 

 

~~~

 

自分は読んだ本ってなるべく手放したくないんですよね。

上で挙げた台詞だったり、その物語全体のメッセージだったりっていうのが、少なからず今、自分が考えて生きていく糧になっている。そう考えると、本自体が自分を構成する要素の一部のような気がしてきて、身近に置いておきたくなっちゃうんですよね。

読書家を名乗れるほど量を読んではいないんですが、本が無ければ今の自分はいないと断言できます。それほどまでに今まで本から学んだことは多い。本当に。初めて自分で小説を買ったのは中学生のときですが、そのキッカケをくれた人物には本気で感謝しています。ありがとうございます。

 

ただ本を読んで「面白かったー!」ってなることよりは、自分の知らない思想や価値観に触れて「こんな○○もあるんだな」と視野が広がる感覚こそが、本当に本の面白いところじゃないかなと私は思います。行けない場所も、知らない時代も、存在しない世界も、1冊の本の中で無限に広がってて、手軽に飛び込めるんですよ。こんな楽しいことってそうそうないですよほんとに。

 

 

本はいいぞ。

あとなんかオススメの本あったら教えてください。お願いします。

 

 

では。