大腸小腸絶不調

生活は下手クソですが、得意気に生きるのは得意です。

砂漠(伊坂幸太郎)を読みました

どうもこんばんは。いっぽです。

 

実は結構前に読み終えていたんですが、上手く文章に起こせる気がしなくてほっておいたのですが、このままだと一生脳みその中で塩漬けになりそうなので起こしておきます。

ほとんどいないと思うけど、できれば高校生~大学生くらいのうちに読んでほしい。自分は大学生のうちにこの本に出合えなかったことを後悔してる。高卒だけど。

 

 

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主な話としては、とある男女5人の大学生活の話になります。

ミステリーとかによくある1つの事件を軸に人間が動いていくって形のお話ではなくて、5人が大学生活を送るうえでいろんな出来事に出会ってなんやかんやするお話です。伊坂幸太郎らしい構成ではあるけど。

 

特筆しておきたいのは登場人物の良さ。多分この記事、登場人物の魅力だけ紹介したら終わると思う。もう自分の勝手な妄想入りでめちゃくちゃに書くんで、真偽が気になったら伊坂幸太郎の砂漠を買って読んでくれ。

 

 

主人公の北村、この話は全て北村目線で進むんだけど、この北村って奴がまぁ陰キャ。要するに俺ら。

大学の新歓とか出ても、居酒屋の入り口から一番遠い席で壁に背中ついて「みんな必死だな、馬鹿らしいな」みたいな顔して一人で飲んでる奴。身に覚えありませんか?俺は本屋で、冒頭のこのシーン読んだだけでこの本を購入しました。何故か、何故か知らんけど、心臓のあたりがきゅっとなったので。

 

その北村を見つけて「みんな必死だな、馬鹿らしいな、みたいな顔してんね」って声かけてくるのが鳥井。いい奴。

北村が陰キャだってのを見抜いた上で「まぁまぁ、せっかく来たんだし、楽しくやろうよ」なんて言って他の席に北村を連れて行ってくれるめちゃくちゃイイ奴。多分この鳥井って奴は根っこは陰キャで、北村よりだいぶ精神が大人。

だってね、本当の陰キャだったら新歓なんて来ないわけよ。つまらなそうな顔してるとはいえ、新歓の席に顔出してるってことは「付き合いが大事ってのはわかるけど、自分はそっち側には染まらない」みたいな"""陰・プライド"""が邪魔をしていて、めちゃくちゃ中途半端な状態なわけ。

それを見抜いたうえで「まぁまぁ、わかるけどさ」って声をかける鳥井は、もともと陰キャだったかイジメの経験がある、間違いない。いや妄想だけどね。

学生時代に救われなかった陰キャ達は、鳥井のような奴に救われなかった運命を呪いながら読むといい。

 

その鳥井に連れられて座った席で一緒になったのが、南という女の子。メインの5人の中で唯一の良心。癒し枠。

他の4人が「面白そうじゃん!やろうぜ!」ってなる中で一人「危ないよぉ、やめようよぉ」みたいなポジションにいる貴重なストッパー的な役です。そう言いながら結局ついてきちゃうんだけど。ストッパーとは。

そんな彼女、「不思議な力」が使えるんですが、天気の子みたいにセカイの存続を一人で背負ったりはしないので、安心してご覧ください。

 

そんな飲み会に遅れて登場し、全く空気を読まずにマイクで自己紹介を始め、挙句に「世界平和、戦争反対、アメリカを許すな」みたいなことを宣う男が、私が一番大好きな西嶋でございます。この男、遅れた理由と戦争やアメリカにキレてる理由が「雀荘でボロカスに負けたから」なんですよ。最高じゃん。俺がその場にいたら間違っても関わりたくない。

この西嶋って奴、めちゃくちゃ不器用なクセにめちゃくちゃ真っ直ぐ。一言で言うと愚直。この飲み会以降、自然と関わるようになってしまうんですが、話が進めば進むほどこの男が好きになる。鳥井とは全く違う意味でイイ奴。

コイツ良い意味でアホなんですよほんとに。「空気が読めない」と「空気を読まない」の違いわかります?西嶋は「空気を読まない」タイプのアホで、絶対的な自分の価値観でもって、やるべきと思ったことは絶対やるんですよ。「理屈なんか知ったこっちゃないですよ」みたいなこと言ってね。周りの人間も「いやわかるけどさ」と言いつつ、そんな西嶋が嫌いになれない。

西嶋も「空気が読めない」わけではないし、周りもそれをわかってる。お互いにわかってて上手いことやってるっていうバランス感がめちゃくちゃ好きで、読み進めるにつれて俺は西嶋が大好きになりました。多分、西嶋のキャラが刺さらない人にはそもそもこの本は向いていない気が、しないでもない。知らんけど。

 

最後の5人目、このしっちゃかめっちゃかな飲み会で、見た目に釣られたオス達に囲まれて氷みたいな無表情で塩対応してるのが、とびきり美人の東堂さんです。

感情が全く表に出ないバチクソ美人な東堂さん、北島の思いつきで後々絡むことになるんですが、まぁ話さんでおこう。見た目がよくてオスが寄ってくるのに全くなびかない時点で、そういう人間だぞということだけ言っておきます。東堂もめちゃくちゃ好きな人物です。

 

 

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この5人の大学生活の話が「砂漠」であって、それ以上でも以下でもないです。特に大きいオチも何もないです。

出来れば学生時代のうちに手に取ってほしい本のうちの1冊だし、既に「大人」になってしまった人にも、読んで「あぁ~~~」ってなってほしい。自分は「あぁ~~~」となりましたので。

 

ただ、高校とかと違って大学は今からでも入る可能性ありますからね。この小説を読んで大学生活に憧れを抱いて、仕事の傍らで勉強して大学に入って、そこで出会った仲間となんでもない日常を過ごしたり、ときに真面目に将来について議論したりして、今までとは全く違う人生を、昔切り捨てたはずのルートを、今から歩み始める。

 

 

 

なんてことは、まるでない。